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執筆者の写真秋山妙子

PERFECT DAYS

パーフェクトデイズを観てきました。



私の知人に、この映画設定と良く似た生活を送っていた男性が4人いる。

今はもう50代と、60代と。


4人のうち、3人は縁遠くなってしまった。

3人は昔のまま同じ生活をしているようだ。

1人は結婚して、別の暮らしに入った。

4人とも、人と触れ合わない肉体労働を選び、日々の静かなルーティンを繰り返しながら生活していた。


非常に感性の豊かな人たちで、音楽や書物に詳しく、自己啓発の本など読まず、唸るようなセンスで、1人を除き部屋を大変に綺麗にしていた。この映画そのままに。


彼らから知ったものは、永田耕衣、夏石番矢、富澤赤黄男、西東三鬼、耕治人、大竹伸朗の文章、エリック・フォッファー、沢村貞子。音楽だったら、ヒルデカルド・フォン・ビンゲン、スティーブン・ライヒ、フィッシュマンズ、バッファロードーター、などなど。あとは忘れちゃった。


あるとき、そのうちの1人から手紙が来て、

「僕のアパートが泥棒に入られました。押入れに置いてあったお金のカンカンが盗られ、ロクジュウナナマンエンほど無くなりました。警察が指紋を取っていきました」

と書いてあった。


またあるときは別な人に、元気かなと思い立って電話したらば、

「今、最後の荷物を取りに来る運送屋の電話を待って受話器の前に座っていたんだ。全てと連絡を断つために引っ越すところで、引っ越し先の住所は言わない。もうあなたとも連絡が取れなくなるけど、元気で」

と言われた。


そんな彼らのことを一人一人思い出しながら観た。とても良くできた映画で、畳、自転車、銭湯への入り方、コインランドリーの洗剤、読書、カセット、コーヒーなどなど、彼らの生活との共通項が随所にあった。


映画では時々、演出過多が鼻につくシーンがあって嫌だったけど、役所広司は自転車にまたがり、畳に寝そべり、銭湯で身体を洗っていた。


なんだろう、この、「淡々と流れる自然な日常」を出すための、細かい、細かい計算。


そうか、薄い下地を何層にも重ねてノーメイクのように仕上げる、高度なナチュラルメイクと同じだな。


そう思いながら映画館を出ました。


完璧に閉じたスノードームの世界は美しいエアポケット。


便器に貼り付いた大便も、使用済みナプキンの匂いも、荒れるはずの指先も、黄ばむはずの歯も。


その辺りはキラキラして散らからない雪と同じ。こちらには届かない、それが映画だよな。


そんな感想でした。


映画を観た方は、サロンでお話ししませう!!

ご予約はこちらからどうぞ。



ではでは、サロンでお会いしましょうー!

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