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執筆者の写真秋山妙子

「信頼と開放」(長文)


ケルン放送交響楽団の首席として活躍されているヴィオラ奏者の村上 淳一郎さんの公開レッスン&リハーサルに行ってきました。

(去年の公開レッスンが素晴らしかったので、心待ちにしていた)

学生さんの演奏は確かに、立派なメロディーに模範的な音の強弱なのですが、なぜか退屈だし、頑張って弾いている無駄な力がダイレクトに鼓膜に伝わるので、聞いていると疲れてきてしまう。

(色でいうと茶色の、似たような質感の何かが永遠に同じ幅で並んでぶつかってくるのをひたすら受け止める印象)

そこに村上さんのアドバイスが入ると、音が息づいてくるのです。

音の一つ一つがつながって、生きてくる。生き物になるから音の質感が全然変わる。

輝いたり、細くなったり、立体的に物凄く色づきます。

躍り上がったり、ねじれたりしながらそれぞれの鼓膜に滑り込むように入ってきて、心に触れていく音に変わる。 変わる、変わる、姿勢、表情、肩の力、笑顔、そして、音。

生徒さんの良い部分を巧みに引き出しながら、慣れ親しんだわかりやすい比喩で音の出し方を説明しながら、「もっとギリギリまでおいで、転ぶことを恐れないで」という村上さんの指導は、魂の豊かな人だけができる精度の高い人間の調律のようで、会場全体が成熟していきました。

色々感じることが沢山あったし、沢山メモしました。体の使い方について、心のありようについて、今ここで音楽を奏でることの喜びについて。

村上さんと本郷さん(ヴァイオリニスト)での二重奏の公開リハーサルでは、二人の頚椎7番の後ろに目が開いているのが感じられ、肩甲骨の上角からも見えない羽のような感覚器が無数に広がって、微細な振動をしているように感じました。これは特別なものでなく、彼らの皮膚のつづきかも知れません。

それらの見えない臓器で相手の呼吸を感じながら、自分の世界をどんどん開放していく。

頚椎7番の目や肩甲骨からの感覚器は、徐々に発達するのか、それとも生まれつきそれが発達している人が演奏の道にいくのか、どっちかしら。訓練でどこまで開くのかしら。

中学生から東京フィルハーモニー管弦楽団 副首席奏者まで、様々な生徒さんが村上さんの指導にかかりました。

本当に良かった。

かちかちに緊張している生徒さんが最後に奏でたメロディーは、彼女の持つ独特の優しさそのままで心の波にそっと触れてきた。涙が出ました。

・心も体も自然に開いて世界を受け入れながら、本当に自分の言葉で話しているか。

・不安定さを信頼し、自分のものにできているか。

・常に先の予感を含ませながら、響きを止めずに開放しているか。

・早くなったり、大きくなったりするときにエネルギーの質を硬くしていないか。

・どこまで先を意識した状態で弾いているか。

・合わせようとする意識を持たず、裸のまま弾いているか。

村上さんの教えている内容を、私の仕事に、人生に、どうやって活かせるだろうか。

私は明日から、どういう姿勢で、横隔膜で、重心で、心のありようで、どうやって人に触れていこうか。

余韻が残りすぎてアウトプットせずにはいられない公開レッスン&リハーサルでした。

私も行きます。ご都合の合う方は是非!

素晴らしかった。ありがとうございました。

幸福な気持ちで。

おやすみなさい。


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